食べ過ぎです ― 2012年05月18日 11時22分
久しぶりに高田さんに会ったら、はっきり右側上部の奥歯が抜けていた。
僕も歯周病を放っていたら、3か月前に歯医者から両側下部の奥歯をあっさり抜かれてしまった。
ご飯を食べても、歯が噛みあわないので、すっぽり空いた隙間に米粒が米粒のまま滞在して、いつまでも潰れない。うどんも刺し身もみんなそうである。
こうなったのは自己責任とはいえ、実に情けない食生活に成り果てた。
みなさん、歯は大事にしましょう。
そんな奥歯無しの男ふたりが昼飯を共にした。高田さんの奢りである。
連れて行かれたのは、地元のやや構えのよい料理屋。
席を外している間、高田さんが注文した大きな膳には、ウナギの蒲焼き、てんぷら、刺し身、小鉢、漬け物、茶碗蒸し、味噌汁、ご飯がところ狭しと並んでいる。
蒲焼きだけでも、立派な一人前のうな丼になるボリュームだ。てんぷらもいろんなものが山のように盛り付けてある。
以前、人吉市内の有名なうなぎ屋で高田さんにうなぎの蒲焼き、白焼き、それに木の葉に包んだ焼き物の「うなぎ3本攻め」に遭ったことがある。渓流のそばにある珍しい雉(きじ)料理の店でも腹いっぱいご馳走になった。鹿の焼肉も、鮎も食べた。出前をとってもらい、高田家の応接間でラーメンの大盛りと餃子一人前を平らげたこともある。
とにかく「食べ過ぎ」。
「高田さん、俺、糖尿なんだよね」
「あっ、そうか。すみません」
「高田さんもこの間、通風が出たばかりでしょ」
「あっ、そうだった。いけねえ、忘れてました」
そういいながら、ふたりともいつものように残さずに完食した。
出された料理は、たとえ歯がなくとも、糖尿や通風であろうとも、ぜんぶ食べるのが我々の育ち方である。
僕も歯周病を放っていたら、3か月前に歯医者から両側下部の奥歯をあっさり抜かれてしまった。
ご飯を食べても、歯が噛みあわないので、すっぽり空いた隙間に米粒が米粒のまま滞在して、いつまでも潰れない。うどんも刺し身もみんなそうである。
こうなったのは自己責任とはいえ、実に情けない食生活に成り果てた。
みなさん、歯は大事にしましょう。
そんな奥歯無しの男ふたりが昼飯を共にした。高田さんの奢りである。
連れて行かれたのは、地元のやや構えのよい料理屋。
席を外している間、高田さんが注文した大きな膳には、ウナギの蒲焼き、てんぷら、刺し身、小鉢、漬け物、茶碗蒸し、味噌汁、ご飯がところ狭しと並んでいる。
蒲焼きだけでも、立派な一人前のうな丼になるボリュームだ。てんぷらもいろんなものが山のように盛り付けてある。
以前、人吉市内の有名なうなぎ屋で高田さんにうなぎの蒲焼き、白焼き、それに木の葉に包んだ焼き物の「うなぎ3本攻め」に遭ったことがある。渓流のそばにある珍しい雉(きじ)料理の店でも腹いっぱいご馳走になった。鹿の焼肉も、鮎も食べた。出前をとってもらい、高田家の応接間でラーメンの大盛りと餃子一人前を平らげたこともある。
とにかく「食べ過ぎ」。
「高田さん、俺、糖尿なんだよね」
「あっ、そうか。すみません」
「高田さんもこの間、通風が出たばかりでしょ」
「あっ、そうだった。いけねえ、忘れてました」
そういいながら、ふたりともいつものように残さずに完食した。
出された料理は、たとえ歯がなくとも、糖尿や通風であろうとも、ぜんぶ食べるのが我々の育ち方である。
小さな蔵、実力の証明 ― 2012年05月17日 06時38分
こういう情報に接すると、本当に高田さんは控え目というか、宣伝がヘタだなぁと思う。こんな話は大きな声で、もっと外に向かってしゃべればいいのに。
写真は、高島屋が外商お得意様特別ご招待として企画したカタログのページである。
内容は石川県の九谷焼の陶工・第四代徳田八十吉さんが作った2種類の九谷焼の容器に、高田さんの手造り焼酎を詰めた逸品を紹介したもの。どちらも三点限りという希少品である。
価格はフリーカップ2客付きで21万円(税込み)。高田酒造場の商品としては過去最高を記録した。
先代の第三代徳田八十吉さんは九谷焼の人間国宝として著名な人。その長女が四代目を継いでいる。
説明調になってしまったが、要するに、高田さんの焼酎の評価はかくも高いという証拠である。カタログを見ると、企画の内容から編集の扱いまで、その他の諸々の酒類の中では破格の扱いということが一目瞭然だ。
「ここまでしていただいて、ありがたいことです。徳田さんもうちの焼酎がおいしい、おいしいとまわりに薦めていただきました。気取ったところのない、本当に感じのいい方ですね。女性なのに親から継いだ名前が八十吉。私の娘が継ぐ家の代々の名前は又助。どちらも男の名前なので、境遇が似ていますねと笑っていました」と高田さん。
先週末、徳田さんの作品6点は高島屋のバイヤーふたりが大切に抱えて、高田酒造場まで持ってきた。そして蔵の奥に寝かしていた長期貯蔵の貴重な秘蔵酒を詰めて、両手に抱えて東京に帰って行ったという。宅配便で送るなんてとんでもない。こわしたら大変である。行き帰りとも、さぞかし気を遣ったことだろう。
この銘酒は僕にはとても手の届かない無縁の世界の品物である。しかし、ほかの焼酎で十分だ。高田さんの手造り焼酎はどれも抜群にうまいから。
これは他のルートから耳にした話だが、過日、酒の鑑定士が球磨焼酎の蔵を試飲してまわったことがある。その人がこういったという。
「高田酒造場があってよかった。球磨焼酎にも希望の光があった。この蔵の焼酎はひとつ一つそれぞれ個性があって、味、香りともすべての品質のレベルが非常に高い」
ひいきの引き倒しになりはしないかと心配しつつ、僕は高田酒造場を全国にもっと自慢したい気持ちである。
写真は、高島屋が外商お得意様特別ご招待として企画したカタログのページである。
内容は石川県の九谷焼の陶工・第四代徳田八十吉さんが作った2種類の九谷焼の容器に、高田さんの手造り焼酎を詰めた逸品を紹介したもの。どちらも三点限りという希少品である。
価格はフリーカップ2客付きで21万円(税込み)。高田酒造場の商品としては過去最高を記録した。
先代の第三代徳田八十吉さんは九谷焼の人間国宝として著名な人。その長女が四代目を継いでいる。
説明調になってしまったが、要するに、高田さんの焼酎の評価はかくも高いという証拠である。カタログを見ると、企画の内容から編集の扱いまで、その他の諸々の酒類の中では破格の扱いということが一目瞭然だ。
「ここまでしていただいて、ありがたいことです。徳田さんもうちの焼酎がおいしい、おいしいとまわりに薦めていただきました。気取ったところのない、本当に感じのいい方ですね。女性なのに親から継いだ名前が八十吉。私の娘が継ぐ家の代々の名前は又助。どちらも男の名前なので、境遇が似ていますねと笑っていました」と高田さん。
先週末、徳田さんの作品6点は高島屋のバイヤーふたりが大切に抱えて、高田酒造場まで持ってきた。そして蔵の奥に寝かしていた長期貯蔵の貴重な秘蔵酒を詰めて、両手に抱えて東京に帰って行ったという。宅配便で送るなんてとんでもない。こわしたら大変である。行き帰りとも、さぞかし気を遣ったことだろう。
この銘酒は僕にはとても手の届かない無縁の世界の品物である。しかし、ほかの焼酎で十分だ。高田さんの手造り焼酎はどれも抜群にうまいから。
これは他のルートから耳にした話だが、過日、酒の鑑定士が球磨焼酎の蔵を試飲してまわったことがある。その人がこういったという。
「高田酒造場があってよかった。球磨焼酎にも希望の光があった。この蔵の焼酎はひとつ一つそれぞれ個性があって、味、香りともすべての品質のレベルが非常に高い」
ひいきの引き倒しになりはしないかと心配しつつ、僕は高田酒造場を全国にもっと自慢したい気持ちである。
木箱からラベルの文字まで ― 2012年05月15日 14時38分
先日、さわやかな五月晴れの下、久しぶりに高田酒造場を訪れた。
さっそく仕込み蔵に入る。カメは空のものが多く、そろそろ今期の仕込みも終わりが近い。最後の蒸留は来月初めの予定という。
倉庫では高田さんがオークロード用の木箱をサンドペーパーで磨いていた。
オークロードの注文が一度に100本まとめて来たのはいいけれど、今まで使っていた製材所が急に廃業してしまった。そこで別の製材所から杉板を買い求め、自分たちで釘を打って箱をこしらえ、ギザギザした木の表面をこうして磨いているのだという。
「連休中は瓶詰めから商品づくりまでギリギリで、初めて『旬』のラベルを手で貼りました」と高田さん。
「へえ、高田さんが貼ったの。焼酎の仕込みからオークロードの箱づくりまで正真正銘の完全手造りじゃない。よくやるなぁ」
「この木箱はパートの女の子がつくったんですよ。なかなかのものでしょ」
まぁ、工作の時間のような手仕事だけど、サンドペーパーで木箱を100個も磨くと指先がすれて痛くなるだろう。
それでも釘を打ったり、磨いたり、本人たちはけっこう楽しんでいる様子。最後は自分たちでなんとかするところが、いかにもこの蔵らしい。
手づくりはこれだけにとどまらない。
若手の蔵子の中村さんはりんどうの花酵母焼酎「りんどう」を仕込んで、ラベルの文字まで書いた。高田さんの娘の恭奈ちゃん、女性事務員のKさんもPB商品のロゴ(商品の文字)を書いたという。
「みんなが手伝ってくれたので、ラベルの書き文字の料金はタダです」と高田さんは上機嫌である。
ここまでやれば自分たちの蔵の焼酎にいっそう愛着も湧こうというもの。
高田酒造場はいつ行っても気分がいい。
さっそく仕込み蔵に入る。カメは空のものが多く、そろそろ今期の仕込みも終わりが近い。最後の蒸留は来月初めの予定という。
倉庫では高田さんがオークロード用の木箱をサンドペーパーで磨いていた。
オークロードの注文が一度に100本まとめて来たのはいいけれど、今まで使っていた製材所が急に廃業してしまった。そこで別の製材所から杉板を買い求め、自分たちで釘を打って箱をこしらえ、ギザギザした木の表面をこうして磨いているのだという。
「連休中は瓶詰めから商品づくりまでギリギリで、初めて『旬』のラベルを手で貼りました」と高田さん。
「へえ、高田さんが貼ったの。焼酎の仕込みからオークロードの箱づくりまで正真正銘の完全手造りじゃない。よくやるなぁ」
「この木箱はパートの女の子がつくったんですよ。なかなかのものでしょ」
まぁ、工作の時間のような手仕事だけど、サンドペーパーで木箱を100個も磨くと指先がすれて痛くなるだろう。
それでも釘を打ったり、磨いたり、本人たちはけっこう楽しんでいる様子。最後は自分たちでなんとかするところが、いかにもこの蔵らしい。
手づくりはこれだけにとどまらない。
若手の蔵子の中村さんはりんどうの花酵母焼酎「りんどう」を仕込んで、ラベルの文字まで書いた。高田さんの娘の恭奈ちゃん、女性事務員のKさんもPB商品のロゴ(商品の文字)を書いたという。
「みんなが手伝ってくれたので、ラベルの書き文字の料金はタダです」と高田さんは上機嫌である。
ここまでやれば自分たちの蔵の焼酎にいっそう愛着も湧こうというもの。
高田酒造場はいつ行っても気分がいい。
「くまモン」ラベル地元に登場 ― 2012年04月21日 12時24分
頼まれていた本を書いたり、新しい仕事で鹿児島に行ったりで、ブログから遠ざかってしまった。この間もホームページを通して全国各地からたくさんの注文があった。お礼を申し上げます。
明日はあさぎり町の町議選の投票日。それに税務署の対応も重なって、高田さんはなにかと忙しい様子。まぁ、いつものことだけど。
先に高田さんからの依頼で、久しぶりに蔵のニュース・リリースを書いた。
参考までにいうと、ニュース・リリースとは企業や団体、個人等が社会への情報発信を目的に新聞社やテレビ局などに送る文書のこと。担当の目に留まれば記事にしてもらえる。広告とはちがって、一般の報道なので信頼性が高く、広告以上の効果が期待できる。
大企業は毎日のように新製品発売や研究開発、企業買収等のニュース・リリースを出しているが、中小零細企業はそうはいかない。まずそういうノウハウがない。
少し恰好をつけていうと、これも情報戦略とか、ブランド戦略のひとつである。
話がそれた。件(くだん)のニュース・リリースの内容は、高田酒造場の一部の焼酎のラベルに、「ゆるキャラ」の人気コンテストで日本一になった熊本県のイメージキャラクター「くまモン」をあしらい、球磨焼酎を元気づけよういうものだった。
一時的なブームを追わず、自主路線を大事にする高田さんにしては珍しい発想である。
「球磨焼酎は熊本を代表する特産品ですから、「くまモン」との組み合わせることで、地元のお土産品としての認知度を高めようと思いまして。デザインのアイデアやラベルの文字は、うちの若手たちが考えました」
なるほど、ユーモラスなデザインは蔵の若手たちがひねり出したわけだ。彼らの出番は確実に広がっている。
「くまモン」ラベルの焼酎は「あさぎりの花」「蔵の朔」「柑花」、それに熊本県の花のりんどうの花酵母からつくられた「りんどう」の4種類。ちなみに「りんどう」は県内だけで売られている人気銘柄のひとつである。
「くまモン」の花酵母焼酎4点は、いずれも熊本県内だけの販売。地元百貨店、お土産品店、酒販店などで販売されている。僕も熊本に行かないと買えない。それが土産品としての値打ちであろう。
関東、関西への拡販も大切だが、地元にしっかり根を張って、地元から全国に発信しようする努力も小さな蔵の基本的な生き方である。
明日はあさぎり町の町議選の投票日。それに税務署の対応も重なって、高田さんはなにかと忙しい様子。まぁ、いつものことだけど。
先に高田さんからの依頼で、久しぶりに蔵のニュース・リリースを書いた。
参考までにいうと、ニュース・リリースとは企業や団体、個人等が社会への情報発信を目的に新聞社やテレビ局などに送る文書のこと。担当の目に留まれば記事にしてもらえる。広告とはちがって、一般の報道なので信頼性が高く、広告以上の効果が期待できる。
大企業は毎日のように新製品発売や研究開発、企業買収等のニュース・リリースを出しているが、中小零細企業はそうはいかない。まずそういうノウハウがない。
少し恰好をつけていうと、これも情報戦略とか、ブランド戦略のひとつである。
話がそれた。件(くだん)のニュース・リリースの内容は、高田酒造場の一部の焼酎のラベルに、「ゆるキャラ」の人気コンテストで日本一になった熊本県のイメージキャラクター「くまモン」をあしらい、球磨焼酎を元気づけよういうものだった。
一時的なブームを追わず、自主路線を大事にする高田さんにしては珍しい発想である。
「球磨焼酎は熊本を代表する特産品ですから、「くまモン」との組み合わせることで、地元のお土産品としての認知度を高めようと思いまして。デザインのアイデアやラベルの文字は、うちの若手たちが考えました」
なるほど、ユーモラスなデザインは蔵の若手たちがひねり出したわけだ。彼らの出番は確実に広がっている。
「くまモン」ラベルの焼酎は「あさぎりの花」「蔵の朔」「柑花」、それに熊本県の花のりんどうの花酵母からつくられた「りんどう」の4種類。ちなみに「りんどう」は県内だけで売られている人気銘柄のひとつである。
「くまモン」の花酵母焼酎4点は、いずれも熊本県内だけの販売。地元百貨店、お土産品店、酒販店などで販売されている。僕も熊本に行かないと買えない。それが土産品としての値打ちであろう。
関東、関西への拡販も大切だが、地元にしっかり根を張って、地元から全国に発信しようする努力も小さな蔵の基本的な生き方である。
なつかしいなぁ ― 2012年03月19日 18時20分
少し時間が経ってしまったが、書き残しておこう。
先日、BS放送の無料期間中、たまたま放送大学の講座の画面が出たとき、懐かしい顔が映っていた。
和紙で表情豊かな人形を作る内海清美さん。空海や源氏物語の大作で知られる芸術家である。白い和紙の人形は迫力に満ち、臨場感と存在感にあふれている。
もう十年余りも会っていない。東京の学生時代、ぼくを息子のようにかわいがってくれたSさんの甥っ子で、彼とは青春時代の忘れられない因縁がある。
ちょうど南こうせつの「神田川」が流行っていて、その歌詞のなかの舞台も情景もそっくりぼく自身の青春のひとこまだった。
そのシーンに内海さんもいた。
もうずいぶん前になるが、福岡市内の百貨店で彼の代表作のひとつである空海のドラマの人形展があった。そこで昼飯をご馳走になり、「懐かしいですねぇ」を連発したものだ。
テレビで見る内海さんの顔はさすがに年齢を重ねていたが、話の内容には深みがあり、あのころしきりに内田百聞などの本を読まれていたことを思い出した。
高田馬場駅から飲食店街の路地に入り、神田川の近くのジャズスナックで、ぼくは1升ビンを立てて、コップで酒をごくごくと飲み、彼は静かに口を浸しながら、哲学のようなむずかしい話をしていた。年も離れていたし、男女の間の考え方でも自分が幼稚なガキに見えて、歯が立たなかった。
芸大を卒業して、和紙をつかった創作を確立するまでには、いろんなことがあったと思う。
若いころのご縁のありがたさは、その当時はよくわからない。いろんな人がぼくを育ててくれた。いまごろになって、しみじみとそう思う。
先日、BS放送の無料期間中、たまたま放送大学の講座の画面が出たとき、懐かしい顔が映っていた。
和紙で表情豊かな人形を作る内海清美さん。空海や源氏物語の大作で知られる芸術家である。白い和紙の人形は迫力に満ち、臨場感と存在感にあふれている。
もう十年余りも会っていない。東京の学生時代、ぼくを息子のようにかわいがってくれたSさんの甥っ子で、彼とは青春時代の忘れられない因縁がある。
ちょうど南こうせつの「神田川」が流行っていて、その歌詞のなかの舞台も情景もそっくりぼく自身の青春のひとこまだった。
そのシーンに内海さんもいた。
もうずいぶん前になるが、福岡市内の百貨店で彼の代表作のひとつである空海のドラマの人形展があった。そこで昼飯をご馳走になり、「懐かしいですねぇ」を連発したものだ。
テレビで見る内海さんの顔はさすがに年齢を重ねていたが、話の内容には深みがあり、あのころしきりに内田百聞などの本を読まれていたことを思い出した。
高田馬場駅から飲食店街の路地に入り、神田川の近くのジャズスナックで、ぼくは1升ビンを立てて、コップで酒をごくごくと飲み、彼は静かに口を浸しながら、哲学のようなむずかしい話をしていた。年も離れていたし、男女の間の考え方でも自分が幼稚なガキに見えて、歯が立たなかった。
芸大を卒業して、和紙をつかった創作を確立するまでには、いろんなことがあったと思う。
若いころのご縁のありがたさは、その当時はよくわからない。いろんな人がぼくを育ててくれた。いまごろになって、しみじみとそう思う。
蔵に寄れず ― 2012年03月12日 17時10分
先週の土曜日、鹿児島まで車で往復した。途中、高田酒造場に寄ろうと思っていたが、とても時間的な余裕がなく、高田さんとは電話だけですました。
前日に連絡があり、「できれば寄るね」と伝えていた。会って聞きたい話があった。
りんどうの花酵母のこと。りんどうは熊本県の花である。それからつくった焼酎の話を詳しく聞きたかった。
ナデシコ、日々草、アベリア、つるばら、シャクナゲ、みかん、そして、りんどう。花酵母の焼酎は7種類にもなる。何度もいうが、こんな蔵はどこにもない。
もちろん、僕は全種類を飲んでいる。全部好きである。というか、この蔵の焼酎はどれもこれもおいしい。みんな個性が違うけれど、みんな上品ですっきりしている。不思議な蔵としかいいようがない。
このところ高田さんは仕込み蔵に入り続けているという。その意味するところのおおよその見当はつく。跡継ぎの恭奈ちゃんに働く父親の背中を見せているのだろう。
今回は残念ながら、蔵には寄れなかった。だが、高田さんの電話の声の向こうに、花の酵母が発酵するときのカメの様子が見えるようだった。いい香りがしているだろうな。
さて、高田さんから頼まれた原稿を書かねば。宿題を終えたら、鹿児島で買ってきたさつま揚げと真っ赤に熟れたトマトを肴に、「五十四萬石」をお湯割りでやろう。
写真は九州自動車道の八代-人吉の山中。23のトンネルが続く。
前日に連絡があり、「できれば寄るね」と伝えていた。会って聞きたい話があった。
りんどうの花酵母のこと。りんどうは熊本県の花である。それからつくった焼酎の話を詳しく聞きたかった。
ナデシコ、日々草、アベリア、つるばら、シャクナゲ、みかん、そして、りんどう。花酵母の焼酎は7種類にもなる。何度もいうが、こんな蔵はどこにもない。
もちろん、僕は全種類を飲んでいる。全部好きである。というか、この蔵の焼酎はどれもこれもおいしい。みんな個性が違うけれど、みんな上品ですっきりしている。不思議な蔵としかいいようがない。
このところ高田さんは仕込み蔵に入り続けているという。その意味するところのおおよその見当はつく。跡継ぎの恭奈ちゃんに働く父親の背中を見せているのだろう。
今回は残念ながら、蔵には寄れなかった。だが、高田さんの電話の声の向こうに、花の酵母が発酵するときのカメの様子が見えるようだった。いい香りがしているだろうな。
さて、高田さんから頼まれた原稿を書かねば。宿題を終えたら、鹿児島で買ってきたさつま揚げと真っ赤に熟れたトマトを肴に、「五十四萬石」をお湯割りでやろう。
写真は九州自動車道の八代-人吉の山中。23のトンネルが続く。
ノンアルコールビールの哀しみ ― 2012年02月27日 19時29分
先週、肌寒い日にワイシャツ、スーツ、コートの軽装備で東京に行ったのがまずかった。
しっかり風邪をひいて、ここ2、3日は頭痛、鼻水、鼻づまり、咳のフルコースで、夜もほとんど眠っていない。
風邪薬はテレビのコマーシャルとは大違いで、なかなか効かない。テレビでやってるように、あっという間にすっきりと治らないのに誇大広告にならないのが不思議だ。ぜんぜん効かないから、すでに3種類目で、いまは漢方の風邪薬を飲んでいる。
太陽の光を浴びていないし、運動もしていないので、免疫力が落ちているのが原因だろう。ああ、一発で治らないかな。
昨夜はとうとう酒を抜いた。代わりにノンアルコールビールを飲んだ。
うまくないねぇ。うまいという人の気持ちがわからん。まさに気の抜けたビールである。
そうはいっても水やお茶を飲むよりはマシ。見た目は白い泡の立ったビールだから、ビールと思って我慢するしかないか。
こんなときにはね、熱燗がいいんだよね。それもお猪口で、クーッと1杯やる。つまみは板ワサとか、イカの塩辛とか。目の前には気立てのいい、かわいい女房がいて。
それが日本の文化というものだろう。
いま仕事が休みの次男がカレーをつくっているところ。トマトやその他、いろんな材料をぶち込むのが好きだから、どんなカレーが出てくるのやら。
カレーに熱燗? 絶対に合わん。すると、やっぱりカレーにノンアルコールビール?
いかん、また頭が痛くなってきた。
しっかり風邪をひいて、ここ2、3日は頭痛、鼻水、鼻づまり、咳のフルコースで、夜もほとんど眠っていない。
風邪薬はテレビのコマーシャルとは大違いで、なかなか効かない。テレビでやってるように、あっという間にすっきりと治らないのに誇大広告にならないのが不思議だ。ぜんぜん効かないから、すでに3種類目で、いまは漢方の風邪薬を飲んでいる。
太陽の光を浴びていないし、運動もしていないので、免疫力が落ちているのが原因だろう。ああ、一発で治らないかな。
昨夜はとうとう酒を抜いた。代わりにノンアルコールビールを飲んだ。
うまくないねぇ。うまいという人の気持ちがわからん。まさに気の抜けたビールである。
そうはいっても水やお茶を飲むよりはマシ。見た目は白い泡の立ったビールだから、ビールと思って我慢するしかないか。
こんなときにはね、熱燗がいいんだよね。それもお猪口で、クーッと1杯やる。つまみは板ワサとか、イカの塩辛とか。目の前には気立てのいい、かわいい女房がいて。
それが日本の文化というものだろう。
いま仕事が休みの次男がカレーをつくっているところ。トマトやその他、いろんな材料をぶち込むのが好きだから、どんなカレーが出てくるのやら。
カレーに熱燗? 絶対に合わん。すると、やっぱりカレーにノンアルコールビール?
いかん、また頭が痛くなってきた。
鹿児島とのご縁 ― 2012年02月26日 17時31分
先日、雨のなかを福岡の自宅から鹿児島市の南方まで車で往復した。
走行距離は660キロ。かなりの距離だが、こどものころ錦江湾に面した大隈半島の小さな町で、右に桜島、左に開聞岳、右斜め前方に夕陽が落ちる鹿児島市を見ながら、暗くなるまで浜や川、山で遊びほうけていた僕は、桜島が近づくとうれしくなる。小学校の1年から4年生まで、わずか4年間の野生児のような暮らしだった。
東京の大学受験に失敗したとき、ひとりで小倉から西鹿児島行きの夜行急行列車に乗って、桜島に会いに行ったこともあった。木造校舎だった古江小学校の校歌はいまも一番から三番まで歌える。
その鹿児島とはやはり因縁があるらしい。人から人のつながりに導かれて、新しいご縁ができた。
脱サラして小さな住宅関係の会社を興したYさん。独学でさまざまな廃液を浄化する製品を開発し、次々に非常に高い成果を上げている。彼とその技術について書きたいことは山ほどあるが、それとは別に僕はご縁の不思議さを感じている。
Yさんを応援している名古屋市のMさんと博多の中洲で飲んだとき、Mさんの連れで現れたのが以前、このブログでも紹介した芋焼酎の蔵・原口酒造の原口さん。お互いに、ナンデ?とびっくりした。
さらにYさんが提唱している焼酎の廃液を利用して、農業から畜産、肥料製造という循環型の産業育成に参加しているのが、高田さんと仲のよい大石酒造場の大石さん。まさか球磨焼酎の故郷と関係があるとは想像もしなかった。いずれも自然を大切にする人たちである。
つくづく世の中は狭いと思う。
高田さんにもYさんの製品を渡した。今度は高田酒造場の手造り焼酎を、芋焼酎の本場の鹿児島に持っていこう。
走行距離は660キロ。かなりの距離だが、こどものころ錦江湾に面した大隈半島の小さな町で、右に桜島、左に開聞岳、右斜め前方に夕陽が落ちる鹿児島市を見ながら、暗くなるまで浜や川、山で遊びほうけていた僕は、桜島が近づくとうれしくなる。小学校の1年から4年生まで、わずか4年間の野生児のような暮らしだった。
東京の大学受験に失敗したとき、ひとりで小倉から西鹿児島行きの夜行急行列車に乗って、桜島に会いに行ったこともあった。木造校舎だった古江小学校の校歌はいまも一番から三番まで歌える。
その鹿児島とはやはり因縁があるらしい。人から人のつながりに導かれて、新しいご縁ができた。
脱サラして小さな住宅関係の会社を興したYさん。独学でさまざまな廃液を浄化する製品を開発し、次々に非常に高い成果を上げている。彼とその技術について書きたいことは山ほどあるが、それとは別に僕はご縁の不思議さを感じている。
Yさんを応援している名古屋市のMさんと博多の中洲で飲んだとき、Mさんの連れで現れたのが以前、このブログでも紹介した芋焼酎の蔵・原口酒造の原口さん。お互いに、ナンデ?とびっくりした。
さらにYさんが提唱している焼酎の廃液を利用して、農業から畜産、肥料製造という循環型の産業育成に参加しているのが、高田さんと仲のよい大石酒造場の大石さん。まさか球磨焼酎の故郷と関係があるとは想像もしなかった。いずれも自然を大切にする人たちである。
つくづく世の中は狭いと思う。
高田さんにもYさんの製品を渡した。今度は高田酒造場の手造り焼酎を、芋焼酎の本場の鹿児島に持っていこう。
当主の仕事はハードだな ― 2012年01月31日 18時34分
電話口の高田さんの声の調子がちょっとおかしい。
「朝から室(むろ=麹室)に入って、麹づくりをすると汗が噴き出すんですよ。いつもはすぐ着替えるんですけど、今日はお客さんが来られたんで着替えるのが遅くなって、からだが冷えたせいですかね」
麹室での作業は、密室で蒸した大量の米と麹をまんべんなく掻き混ぜるので、途中でくたびれたからと休めない。腕の力もいる。外は氷点下の気温でも、麹室は極端にいえばサウナのようなもの。汗が噴き出すのも無理はない。
それも昔ながらの麹室ならではの光景で、いまや麹づくりはそれ専用の三角形をした室でやる蔵が多い。興ざめかもしれないが、超有名なプレミアムのついた銘柄の芋焼酎の蔵もそうである。
高田さんによれば、仕込みはすごくいい状態が続いているという。発酵も順調で、工程通りに進んでいる。若手の中村さんも腕を上げて、いまや蔵の中堅になった。
先週の高田酒造場は沖縄に一泊二日の社員旅行。その後、高田さんは葬式で上京するなど席を温める間もなかったらしい。仕込みで睡眠不足のところにいろんな用事が重なるから、蔵の当主は体力がないととても務まらない。
電話であれこれ40分も話した。それだけ積もる話があった。会って、語り合いながら彼の天下一品の手造り焼酎を飲みたくなった。
「朝から室(むろ=麹室)に入って、麹づくりをすると汗が噴き出すんですよ。いつもはすぐ着替えるんですけど、今日はお客さんが来られたんで着替えるのが遅くなって、からだが冷えたせいですかね」
麹室での作業は、密室で蒸した大量の米と麹をまんべんなく掻き混ぜるので、途中でくたびれたからと休めない。腕の力もいる。外は氷点下の気温でも、麹室は極端にいえばサウナのようなもの。汗が噴き出すのも無理はない。
それも昔ながらの麹室ならではの光景で、いまや麹づくりはそれ専用の三角形をした室でやる蔵が多い。興ざめかもしれないが、超有名なプレミアムのついた銘柄の芋焼酎の蔵もそうである。
高田さんによれば、仕込みはすごくいい状態が続いているという。発酵も順調で、工程通りに進んでいる。若手の中村さんも腕を上げて、いまや蔵の中堅になった。
先週の高田酒造場は沖縄に一泊二日の社員旅行。その後、高田さんは葬式で上京するなど席を温める間もなかったらしい。仕込みで睡眠不足のところにいろんな用事が重なるから、蔵の当主は体力がないととても務まらない。
電話であれこれ40分も話した。それだけ積もる話があった。会って、語り合いながら彼の天下一品の手造り焼酎を飲みたくなった。
ご飯いりません ― 2012年01月30日 18時51分
自宅を仕事の根城にするようになってから、自然に晩飯の用意をする羽目になった。
毎日のことではないけれど、みんなが帰ってくるまでに、買い物をすまして、洗濯物をたたんで、風呂を洗って、沸かして、晩飯をつくっておく。5時半を過ぎるとだんだん暗くなるから、けっこう忙しい。
今日はどんな料理にするか、毎日のように悩む。ぼくひとりなら酒の肴があればいいので、豆腐や刺し身があれば幸せになれる。メニューに苦労することはない。
だが、勤めに出ているカミさんや息子たちはそうはいかない。
今夜は冷えるからメイン料理を豚汁にした。
里芋の皮をむいて大根、ニンジン、ゴボウ、コンニャク、厚揚げも切り分けて、大鍋に入れて、水を注ぎ、火にかけて、アクをとり、もうひとつの鍋で豚肉を湯通ししてから大鍋に移して、酒を加えて、味噌をといて、味見をして、味が薄ければダシを加えて、また味見をして・・・。
これに値段が異常に高いレタス、トマトに、カイワレ、アボガドを銘々皿に盛り分けて、その上に鱸(すずき)を薄作りにした刺し身を乗せた海鮮サラダも作った。豚汁は見た目が地味だけど、緑、赤、黄色、白の色が咲いたサラダがついて食卓が華やかになった。親父の努力を少しは認めてくれるだろう。
でも、これだけだと焼酎の肴にはいまひとつだから、小魚のキビナゴをひとパック買ってきた。酒と味醂と醤油、刻んだショーガも入れて煮魚をこしらえた。30匹以上もある。丸かじりするぞ。安くてうまいんだ、これが。
料理は食べてもらうシーンを想像しながら、あれこれと創意工夫するのがたのしい。
ようやく準備が整ったつい今しがた、ふたりの息子から立て続けにメールが届いた。
「友だちに会うから、ご飯いりません」
いま、ぼくはがっくりきている。
毎日のことではないけれど、みんなが帰ってくるまでに、買い物をすまして、洗濯物をたたんで、風呂を洗って、沸かして、晩飯をつくっておく。5時半を過ぎるとだんだん暗くなるから、けっこう忙しい。
今日はどんな料理にするか、毎日のように悩む。ぼくひとりなら酒の肴があればいいので、豆腐や刺し身があれば幸せになれる。メニューに苦労することはない。
だが、勤めに出ているカミさんや息子たちはそうはいかない。
今夜は冷えるからメイン料理を豚汁にした。
里芋の皮をむいて大根、ニンジン、ゴボウ、コンニャク、厚揚げも切り分けて、大鍋に入れて、水を注ぎ、火にかけて、アクをとり、もうひとつの鍋で豚肉を湯通ししてから大鍋に移して、酒を加えて、味噌をといて、味見をして、味が薄ければダシを加えて、また味見をして・・・。
これに値段が異常に高いレタス、トマトに、カイワレ、アボガドを銘々皿に盛り分けて、その上に鱸(すずき)を薄作りにした刺し身を乗せた海鮮サラダも作った。豚汁は見た目が地味だけど、緑、赤、黄色、白の色が咲いたサラダがついて食卓が華やかになった。親父の努力を少しは認めてくれるだろう。
でも、これだけだと焼酎の肴にはいまひとつだから、小魚のキビナゴをひとパック買ってきた。酒と味醂と醤油、刻んだショーガも入れて煮魚をこしらえた。30匹以上もある。丸かじりするぞ。安くてうまいんだ、これが。
料理は食べてもらうシーンを想像しながら、あれこれと創意工夫するのがたのしい。
ようやく準備が整ったつい今しがた、ふたりの息子から立て続けにメールが届いた。
「友だちに会うから、ご飯いりません」
いま、ぼくはがっくりきている。


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